The Silent Respiration of Forests
連綿と折り重なる木立の襞が 心地よいリズムを刻んでいる 凛とした静寂 けれども、押し寄せ波打つ樹海に耳を澄ませば 微かなざわめきを聴くこともできる その声に手招きされ 誘われるまま踏み入った領域は 果たして至福の楽園の入口なのか 一本の大きな木が垣間見える 巨体をやや斜めに傾けながら森の主の威風を放つ木に 一歩一歩引き寄せられるように近づいていく と、静けさの幕の中から もうこれ以上来てはいけないと言われた気がして 足が止まる あそこには何か棲んでいるなという ただならぬ気配があった
2001年初秋の夕暮れ。山道に迷い偶然出会った小暗い森で、ふいに写真を撮りたいという気持ちに捉えられた。翌日、カメラを担いで出直し、その場所を探した。そうして私は、森の写真を撮っているのではなく、森に写真を撮らされている自分に気づくことになる。
今振り返ると、そうなったはじまりは自分の手で山小屋を建てたことだったかもしれないと思いあたる。小さな森の中に小屋の敷地を拓くため、樹齢80年あまりの赤松を伐り、倒れた木に跨って樹皮を剥いだあの時の感覚は、それから何年たっても蘇る。木が地面に横たわった瞬間の地響きに全身が揺さぶられ、見上げた空の思いがけない広さにしばし呆然とした。手斧の刃先からほとばしった樹液を、まるで返り血のように浴びせられ、木の生命を肌で感じ、とっさに、それをこれから建てる家に生かしたいと心に決めた。
小屋はその後10年がかりで完成した。土台も大黒柱も梁も、もともとその森に立っていた36本の赤松だ。きっとそのせいで、すこぶる居心地がいい。そして私は、小屋を建てるために木に触れ続けるうちに、以前は見えなかった何か、聞こえなかった何かを、感じるようになった気がする。その何かに惹かれて、日本中の森の中に入っていくようになったのかもしれない。
「森の襞 Silent Respiration of Forests」は、森の力が私に撮らせてくれた写真だ。
| 1948年 | 東京生まれ |
| 2002年〜 | ファインアート写真家として活動をはじめ、モノクローム写真の制作に取り組む |
| 2004年〜 | 個展4回、グループ展1回 |
| 2006年 | New York “SOHO PHOTO” portfolio review |
| 2007年 | 第32回日本写真家協会JPS展入選 REVIEW SANTA FE (the premiere juried portfolio review event) |